『Red Riding Hood』制作過程と解説

rrh-2014-0325b赤ずきん”をモチーフにしたミクストメディア作品『Red Ridnig Hood』が完成しました。

この作品の制作期間は2012年11月から2014年3月と非常に長くなりました。なぜこれほど長い時間が必要だったのか、この作品の制作過程について、入り口から完成に至るまでの道筋を書いてみようと思います。

最初、この作品は僕が参加することになったある企画のキービジュアルとして制作する予定でした。グリム兄弟と童話の世界にアドルフ・ヒトラーとエヴァ・ブラウンのエピソードを絡めた演劇作品です。その企画が最初に予定していた内容から大きく変更になったため、完成間近の状態のまま作品は1年以上寝かせた状態になっていました。まずはその当初の企画に沿った制作過程の写真を並べてみます。

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ここまでの状態で作品に乗せてある複数のモチーフについては特に解説せず先に進みます。

企画の内容が変更になり、この作品が宙に浮いた状態になったのでどうしたものか、お蔵入りかなとしばらく放置していたのですが、どこかに引っかかるものがあったのか、仕舞いこんであったわけではなくアトリエの隅に制作途中のそのまま置いてあったのです。他の制作物に手をかけている間もチラチラとこれが目に入る状態。そして今年の3月はじめ、我慢できなくなったんでしょうね、他の制作物が一段落したタイミングでこれが作業エリアの真ん中に戻ってきました。ここから今回の完成に至るまでの制作過程を写真で御覧ください。

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以下は僕自身が作品を制作しながらイメージしたことをある程度細かく書いていきます。読むことで作品のイメージが固定されてしまう可能性がありますので、不要と感じた方は読まずに作品と短い物語を載せたポートフォリオサイトのページヘジャンプしてください。
>> Red Riding Hood』作品ページ


レリーフの中心にある女性の顔はもともとエヴァ・ブラウンと大人になった赤ずきんのイメージをかき混ぜて形にしたものでした。この部分が自分でも気に入っていて、ここはもう何も手を加えたくなかった。前述の企画内容と離れた今、その他の多くのモチーフがレリーフ全体を散漫な印象にしています。まずは下半分のディテールをノミで削り取り、口元から下を覆うものを巻きつけたような形になりました。大人になった赤ずきんがレリーフの中で目を閉じて口元を隠しているのは閉じた心を表しているからです。覆っているものは彼女と世界を隔てるものでもあり、閉じこもる殻でもあり、それでいてどこか暖かさや安堵を感じさせるもの。これはストールや衣類ではなく、裂かれた狼の皮の内側や内蔵をイメージしています。生命のぬくもりと死のイメージを同時に持っていて、それに巻かれて安堵している彼女の危うい状態の象徴。

続いて上半分のモチーフやディテールを削り取りました。レリーフの形は遠吠えをする狼のシルエットで、下部は人魂のようにするっとしたシェイプになっています。この作業のはじめはどこかで自分の気持ちが散漫になっていたのでしょう、目と耳を残して毛並みを作っていたのですが、途中でそれが何の意味も持たないばかりか作品全体を否定してしまっていることに気づき、目も耳も削り落として毛並みだけの上半分とした時にようやくこのレリーフから物語が見え始めたのです。この狼の形は赤ずきんが子供の頃に遭遇した事件を表しているのではなく、神秘的で理解できない何か超越的な存在を象徴する形。

狼とは何だったのか、それに喰われてしまった二人が猟師によって腹を裂いて助けだされたことは現実だったのか、赤いずきんは何を象徴しているのか。それほど恐ろしい出来事のあと、彼女はどんな生き方をしたのだろうか。そんなことを繰り返し考え、そこから広がる想像を頭の中でかき混ぜながら完成した作品です。作品ページでは短い物語とともに完成写真を掲載しています。
>> Red Riding Hood』作品ページ