満員電車と椅子取りゲームと割れる海

隅田川花火大会に向かう人で夕刻にもかかわらずラッシュ時以上に超混雑する地下鉄車内。 吊革につかまって立っていると、時折後ろに立っている男性がやけにガッツンガッツンとぶつかってくる。 なんだ?荷物でもかばってるのかなと振り返ってみるとどうやら恋人と寄り添っているようなので女性をかばっているんだなと納得してガッツンガッツン来るアタックを受け流していると、僕の目の前の座席が2席空いた。 「お、ちょっと疲れてるから乗り換えまでの間座っちゃおうかな」と思ったら先程までのアタックよりも強い当たりで一瞬ヨロっとした隙に僕の背後からカップルが滑りこむようにして席についた。 「おっと、そんなに座りたい人がいるなら仕方ないな」とか思っていたら男性が女性にこう呟いた「この社会は椅子取りゲームだからな!」「えっ?」と聞き返す女性にもう一度「椅子取りゲームなんだよ」と男性。 そっか、そういう信条をお持ちの方でしたか! 椅子取りゲームに夢中になるのもわからないでもないけど、隣の女性の微妙な表情にも気づいてあげたほうがいいよね!

そして、電車を乗り換え先程までの混雑よりも更に混みあう車内。 そうそう、僕は以前パニック障害を患っていたので満員電車が結構苦手。 昨日もこりゃ参ったなぁとか思いながらドア脇の逃げ場のない角にギュウギュウに押し込められていたわけ。 そんな混雑する車両に大きな荷物を持った中高年の男性が乗り込んできた。 こちらに背を向けてお尻からグイグイ人を押し込みながら荷物をかばいつつ乗り込んでくる。 仕方ない、こうでもしないとこの乗車率の車内には隙間を作れない。 そして男性が降りる駅がやってきた。 今度は荷物を盾に、彼が立っていた場所と反対側の乗降口へと向かう鬼の形相の男性。 ブルドーザーよろしく人々をかき分けながら無言の鬼ブルドーザーはどんどん押し込んでいく。 その時後ろから激しく押されることに不快感を感じたらしい男性が「おい!押すんじゃねぇよ!!」と怒号を発した。 鬼ブルドーザーが「降りるんだよ、この野郎!!」と応戦する。 罵り合いながら車外へと降りていった彼らは無事だったんだろうか……。

無慈悲で殺伐とした空気が充満する鉄の箱に揺られ、ついに僕が降りる駅が近づいてきた。 しかし、降車駅で開く扉は僕が押し込められているドア付近からはすし詰め状態の数十人の人々を挟んだ反対側。 額を流れる汗。 ついに電車が停まり、この人波を掻き分けて反対側へ向かわなければいけない時がやってきた。 無事には済まないかもしれない…しかし、躊躇していては降り過ごしてしまう。 この殺伐とした空気が逆に面白くなってきていた僕は思い切って言葉を発した「すみませ~ん、降りたいんだけどこれ、出られるかなぁ;」すると、先程まで殺し合いを始めそうな空気が充満していた車内が一変した。 近くの人が「えー、無理じゃない?」僕「ですよねぇ;」などと言っている間に目の前に道が開けたのだ!! この修羅たちがまさか自ら道を開けてくれるとは!!!! 「うわー!ありがとう!助かります!!」と言いながら比較的楽にホームまで足を進めることができ、閉まる扉の向こうの人たちに軽く手を挙げると何となくみんな優しい顔をしているように見えた。

実は普段から混雑した電車から降りる際には「すみませ~ん、降りまーす!」と声を掛けるようにしてるんだけど、実際こういうふうにしててトラブルになったことは一度も無い。 みんなイライラしてるんだろうけど一声かけられるだけで人の心は結構寛容になるものだから試してみてね!